心霊スポットでイタズラをした結果



またあの悪夢を見てしまった。
あの嫌なシーンから逃れる術はないんだろうか?気休めにカキコしてみます。
25年以上前の古い話なんで細部描写に矛盾があったらごめんね、なるべく思い出して書きます。

ガキンチョだった当時の俺はS市に住んでいました。
原付きバイクを乗り回して夜はほうぼうを走る毎日、ご多分にもれず市内の心霊スポットは直ぐに制覇して暇を持て余していたんだ。

ある日友達と夜釣りに出掛けた時に釣竿の先に付けるケミホタルっていう光る小さい棒を何気なく口に入れてみた。
すると闇夜に顔が浮き立ってとても不気味なテイストを生み出すことを発見して大喜び!
後日試しにその事を知らない友達にドッキリを仕掛けて暗闇の公園で見せたらアホみたいに怖がった。
友達と顔を見合わせて、これは面白い!と思っちゃったんだよね。
後にあんな事になるなんて露知らず。

ある日の土曜の夜、暇過ぎて友達に提案したんだ。
「あのさ、S湖行く途中の道でケミホタルの脅しのやつやらないか?」
「え?誰に」
「道行く知らない人にだよ」
「面白そうだな!やるべ!」
S湖に行く途中の道は曲がりくねった峠道。
当時はほとんど街灯が無くて週末はカップルのドライブコースだった。
都合の良いことに片目のセリカや100キロ婆さんや湖上の幽霊といった都市伝説やオカルト話の絶えないミステリアスな場所だから、ケミホタル口に入れて暗闇に立って、車が来たら口を開けばいいだけ。
ビビる相手を見て楽しむって算段だ。

現地に着くとバイクを林道に隠して一人で縁石に座って車を待つ。
ビビリだから暴走族のマフラー音がしたら隠れる。
一台で走る車が近付いて来たらサイクルロードに立って100メートル手前くらいから口を開いて歯を閉じて下を見つめて無気力に立つ。
真横を通り過ぎる辺りに気付くのだろうか物凄くアクセルをふかして去っていく。
その様が面白くて交代しながら何度もやった。
降りてくる人はいなかった。

それから月に1回か2回はS湖に通っていた。
当時はネットなんてなくて拡散しなかったから何度も遊べたんだと思う。
「今日も行くかwww」
「おう!www」
今考えると何が楽しいのかわからなかったけど、とにかくその日もS湖に行ってイタズラをしたんだ。
深夜2時頃だったと思う。
カモがやってきた。
いつものようにサイクルロードに立って口を開けた。
近付いたその時凄い急ブレーキ音がして反対車線にはみ出て縁石に車がぶつかってしまった。
…ヤバイッ…驚いてハンドル切ったんだ…
友達も慌てて茂みから出てきて二人で車に近寄った。
幸いにも車は凹んだりしてなくて、タイヤが縁石にぶつかっただけなんだと思った。

車内に目をやると多分2人乗っていた(後部は乗っていなかったと思う)。
運転席の男がハンドルに頭をぶつけたのか頭を押さえて下を向いている。(エアバッグは普及していなかった)
助手席に目をやった時に、ギョッとした。そして凍りついた。
助手席に乗っていたのは女の人だったのだが、車は正面にぶつかったはずなのに女の人は左窓に顔をベッタリ付けていた。
目を見開いて首が変な方向に曲がっているように見えた。
暗かったけど血の気のない真っ白な顔だというのが分かった。
友達も同じ事を感じたのか顔を見合わせて、その途端に猛ダッシュしてしまい、その場から逃げてしまった。

「あのさ、あの女の人って死んだんじゃないかな?」

「いや、気絶していただけだよ」

「でも…俺、警察に行ってくるよ」

友達は警察に行くなら縁を切ると言った。
それでも俺は行くことにした。
友達の事は言わないと約束をして。

警察では当然こっぴどく怒られた。
そして日付と時間を申告して当日の救急出動の状況を見てもらった。

「当日はS湖には出動していないよ。多分軽く頭を打っただけなんじゃないの?」

確かに運転席の男はそうだったかもしれない。
しかし助手席の女の人は死人に近かったような気がする。いや、死人を間近で見た事なんて葬式以外ではないので確信はない。
でも、あの精気の無い感じは…アッ!

「今後はそういうイタズラは絶対にやめてね。」

ハイッ!と返事して帰宅した。

帰宅して脳内を整理してみた。
S湖は水死体が浮かない湖として有名…
ただそれだけの理由なんだけどその事を考えただけでゾッとした。